大北のブログ

生きねば。

2013-01-01から1年間の記事一覧

ゴルフ知らないのに書くゴルフ小説10

「それでは選手たちはフェアプレーをこのボールに誓って」 まだ顔にかたさの見える光弘から、ついで寝癖がついたままのボイジャーがボールにキスをする。朝露にぬれたボールは冷たく、光弘の顔はいっそうかたくなった。 「どうした坊っちゃん、フレンチじゃ…

ゴルフ知らないのに書くゴルフ小説9

デビュー戦の朝、光弘は試合会場のゴルフ場に日がのぼる前にかけつけて、自分の名前が書かれた札を裏返した。一番乗りだ。とおもったが、一枚だけすでに裏返っている札がある。それはボイジャー後藤の札だった。 まさか、そのまさかである。あの最もベテラン…

ゴルフ知らないのに書くゴルフ小説8

「三木に行ってきたんですか?」「お、光弘さんもやっぱり三木にね」ゴルフ場のキャディさんや関係者が光弘の新しいクラブを見るたびにそう言う。やはりみんなが持っているものなのだろう。だがこれでプロのスタートラインに立てたことが光弘にはうれしかっ…

ゴルフ知らないのに書くゴルフ小説7

一週間後にボイジャー後藤とのデビュー戦をひかえた光弘にはやることがあった。光弘は兵庫県の三木市にむかった。自分のゴルフクラブを鍛え直す必要があったのだ。刃物の街としても有名なこの街に、ただ一人ゴルフ鍛冶がいた。ゴルフクラブはふしぎな道具だ…

ゴルフ知らないのに書くゴルフ小説6

ボイジャー後藤。その名を知らぬものはいない日本ゴルフ界の重鎮である。1980年代に彗星のごとくあらわれ、またそのあらわれ方があまりにも彗星らしかったので探査衛星にちなんでボイジャーの名がついた。デビューして30年になろうとしているが未だに…

ゴルフ知らないのに書くゴルフ小説5

光弘は荒れていた。毎晩酒を飲んではくだをまいていた。念願のプロテストに合格したというものの、一向にデビュー戦が決まらなかったのだ。たしかに光弘はプロテストを二位以下に圧倒的な差をつけて突破した。そのうわさに尾ひれがついて広まってしまい、み…

ゴルフ知らないのに書くゴルフ小説4

プロテストに合格してからの光弘の生活は一変した。まず運転手がついた。これはみな協会から派遣されるものである。大事なプロゴルファーに交通事故でもおこされた日にはイメージ的にもなにより人材としてもゴルフ業界は痛手である。そうならないように、協…

ゴルフ知らないのに書くゴルフ小説3

光弘のバットが空を切った。ゴルフクラブに比べて30cm以上も短いバットである。同じ感覚でスイングしたところでボールには届かなかった。 そんな光弘を同組の柴田が鼻で笑いながら自分のショットにむかった。柴田のクラブは絹ごし豆腐一丁。キャディーにセッ…

ゴルフ知らないのに書くゴルフ小説2

「あなたたちがここまで来たことは大変よろこばしいことです。ですが、勝負はこれから。プロゴルファーというものはいついかなるときでどこで何をつかってもゴルフを勝ち抜かないといけません。そこでみなさまにはゴルフクラブ以外のものでホールを回ってい…

ゴルフ知らないのに書くゴルフ小説

「いつだってボールはうそをつかない。まっすぐ打てばまっすぐ飛ぶ。それはこのボールのボコボコを手で打ってくれる職人さんのおかげだ」 父、孝允はいつもそんなことを言っていた。光弘は気づけばゴルフクラブを握っていた。友人達がランドセルをおいて野球…

ディズニー・オン・アイス

帰省している。祖母がはりきってしまい、ディズニー・オン・アイスの公演チケットをとってくれた。あのディズニーがしかも氷上で!?……とはならずに、ディズニーに興味もなければフィギュアスケートにも興味もなく。ふ~ん、のまま5,000円近く(!)のチケッ…

DJポリスのことすこし

ワールドカップ予選突破時の渋谷で交通整理アナウンスをした警官がマスコミによって"DJポリス"と命名された。 DJポリスの武器はユーモア。花火大会で無軌道に暴れまわる若者をユーモアでぴしゃりと制御する。悪名高きワールドカップ時の渋谷の交差点もユーモ…