大北のブログ

生きねば。

ゴルフ知らないのに書くゴルフ小説8

「三木に行ってきたんですか?」
「お、光弘さんもやっぱり三木にね」
ゴルフ場のキャディさんや関係者が光弘の新しいクラブを見るたびにそう言う。やはりみんなが持っているものなのだろう。だがこれでプロのスタートラインに立てたことが光弘にはうれしかった。
「ぼくのあげてもよかったのに」
「それいいですよね。私も田舎のお父さんに同じの贈りましたよ」
光弘は今までのウップンを晴らすかのようにショットに打ち込んだ。飛距離はかわらないものの、ショットの正確性はやはり増した。10打に3打は納得のいかないショットがあったのに、今では10打に1打だ。いいものはいい。プロになった今だからわかることだ。
「東京にも支店あるんですよね、それ」
「同じのヤフオクで買いましたよ」
特筆すべきは真っ直ぐの質だ。今までは真っ直ぐとはただ真っ直ぐに飛ぶことだと思っていた。だがこのクラブはちがった。本当の真っ直ぐとは、一直線よりもほんのすこし曲がっていることだとはじめて知った。もちろん本当に曲がっていては打ち損じである。気持ち曲がっているように感じるが、なぜか必ずいいところに落ちるのだ。これが不思議だった。光弘は魔法のクラブのように思えた。
「光弘さんもアメリカのAmazonで逆輸入品買ったクチですか?」
「それ東急ハンズの一階で置きはじめましたよね」
光弘は思い切りふりかぶってゴルフクラブを地面にたたきつけた。耐久性がウリのクラブは少しも曲がらなかった。(つづく)