大北のブログ

生きねば。

ゴルフ知らないのに書くゴルフ小説

「いつだってボールはうそをつかない。まっすぐ打てばまっすぐ飛ぶ。それはこのボールのボコボコを手で打ってくれる職人さんのおかげだ」

 

 父、孝允はいつもそんなことを言っていた。光弘は気づけばゴルフクラブを握っていた。友人達がランドセルをおいて野球バットにグローブをひっかけ自転車を走らせるとき、その横にはゴルフクラブにポロシャツひっかけた光弘の姿があった。カマキリハンドルにドライバーのボデっとした部分をひっかけ、放課後のグラウンドへ走った。とはいっても運動場で打ちっぱなしをするわけではない。光弘もまた野球をしていた。ただしゴルフクラブで、だ。光弘がバッターボックスに入ると守備陣が走りだす。光弘用の守備位置につくため、全員外野へ移動する。それはピッチャーさえもだ。光弘は自分のポケットからゴルフボールを取り出すとホームベースの先にピンとともにセットする。

「まっすぐ打てばまっすぐ飛ぶ」

そう言って光弘はゴルフクラブを振り下ろす。全員が外野からさらに外へと走る中……「ただし遠くへ飛ぶとはかぎらない……!!」

光弘はクラブのスピードをゆるめてチョコンとあてる。バントだ。気づいたときにはまだ全員が外野の位置だ。猛然とボールのもとへ走る守備陣。しかしそれは正確には外野よりももっと遠くの位置。光弘はゆうゆうとホームベースを一周する。

 

そんな小学校時代を思い出していた。プロゴルファー試験の最終日、光弘の目の前には今、一本のバットがあったのだ……(つづく)