大北のブログ

生きねば。

ゴルフ知らないのに書くゴルフ小説2

「あなたたちがここまで来たことは大変よろこばしいことです。ですが、勝負はこれから。プロゴルファーというものはいついかなるときでどこで何をつかってもゴルフを勝ち抜かないといけません。そこでみなさまにはゴルフクラブ以外のものでホールを回っていただきます」

 プロテスト最終日、光弘の前には一本のバットがあった。級友たちがバットを握っていたとき一人クラブを握りしめていた光弘である。まさかこんなことになるとはと昔を思い出さずにはいられなかった。

 しかし光弘が特段運が悪かったわけでもない。むしろよかった方だといえるだろう。光弘の隣では三輪そうめんの束をにぎりしめて泣き崩れている女子ゴルファーがいた。そうめんの束はまだ形になっているからいい。ニシキヘビと対峙したまま脂汗を流しつづけている大男もいた。そう、これがプロテスト。受験者2万人から勝ち抜けるのはたった1人の厳しい世界である。

 (……バットでもなんでもいい、やるしかない)そう意気込んだ光弘が試合会場に現れたとき、そこには一緒にホールを回ることになる3人が顔をそろえていた。

「よろしくな、おれは名門慶応大学ゴルフ部を今年卒業した柴田っていうんだ」柴田は絹ごし豆腐一丁を両手で大事そうに抱えていた。

「こんにちは、あなたバットね。今日は負けないわ。私だって北海道の礼文島の大自然相手にゴルフしてきたんだもの」そう言った田邊という女は虫眼鏡で黒の折り紙に穴を開けていたところだ。

「……おい、なんでもいいから早くしろよ」全身黒ずくめのメンバー表によると田中という男は昆虫の餌であるゼリーカップと正体不明の黒い箱を持っていた。黒い箱からはガサガサと何か音がきこえる……勝負は今、はじまる!!(つづく)